最近のトラックバック

« 18歳と80歳 | トップページ | 約束の場所(600字のエッセイ) »

2020年8月31日 (月)

露天風呂をつくる(600字のエッセイ)

 

家の構造は決まった。間取りも決まった。

さて各部屋の詳細を決める段になって、施主である私は予算がすでに超オーバーしていることに気づいた。キッチンは既製品のシステムキッチン。洗面、トイレもシンプルそのものに。

「お風呂だけは凝りたいですよね」と設計士が膝を乗り出してヒノキ、ヒバの風呂の良さを語る。

「何といってもこの家には木の風呂が似合います」

 

15年も前のこと。はっきり記憶している。設計士の熱心なすすめを蹴ってシンプルなシステムバスにしてもらった。実は秘めたプランがあった。家が完成後、露天風呂を手作りする。里山のドン詰まりの地形を生かして、木々の緑に囲まれて、里山の風景を一望できる風呂。

温泉だってできるかも。100mも掘れば低温だがどこでも温泉が出るとスーパー銭湯の経営者の友人はいう。それは無理でも五右衛門風呂なら確実にできる。風呂上がりに手作りのベランダでビールを飲む。

ということで既製品の風呂で家は完成したが2年、3年たっても一向に露天風呂は実現しない。里山に来るととにかく忙しいのだ。畑の野菜の世話や庭の手入れは充実した時間だが、滞在日はあっという間に過ぎる。

 

そして10年がまたたく間に過ぎた。正直、歳もとってきた。風呂の建設用地はいつでも工事にかかれるが、もはや露天風呂でビールは実現しないだろう。

そんなことなら、設計士の推奨の木の風呂にしておけばよかった。

Dscn6060

少々の灌木はあるがこれを払えば視界がひろがり、はるか先だが海(東京湾)も望めるのだが。

 

« 18歳と80歳 | トップページ | 約束の場所(600字のエッセイ) »

600字のエッセイ」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

フォト
無料ブログはココログ
2021年6月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30