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2020年8月31日 (月)

約束の場所(600字のエッセイ)

    

 

戦後、東京・山手線の外周は急激に人口が増加し、わずかに残っていた遊休地が急速に後退した。子供のころ、林で虫を追い、草地に寝転がり、川に入ってエビを捕まえた。

 

そんな遊び場が忽然と消え、塀で固めた家屋が蝟集した。奪われた私の少年時代。悔しかった。長ずるに及んでも持ち続けていたのは、それを取り戻したいという、漠然としてはいたが強固な思いだった。

 

自然の喪失を唯一救ってくれたのは、夏休みの臨海学校だった。

両国駅からリュックを背負って汽車に乗る。江戸川を渡るとすぐに豊かな田園地帯が広がり、やがて畑と林が交互に現れる。

汽車は突然トンネルに突入する。油断をしていた生徒たちは侵入する黒煙に咳き込み、目的地に着いた時には顔中煤だらけになった。

 

千葉県・外房の紺碧の海。少年の背丈には余るほど高く打ち寄せる波。岩場で貝を拾い、潜れば浅瀬でもサザエが採れた。

それから50年もの月日が流れ、引退の時を迎えた。私は失われた少年時代を取り戻そうともがいた。都会には友人知人親族、医者病院、暮らしに馴染んだものがある。すべてを置いて新しい土地に住めない。

見つけたところは外房の海辺ではなかった。

週末通うのにアクセス時間が短くてすむ内房の、それも里山だった。千葉県安房郡鋸南町。東京から100キロもないのに過疎化が始まり、自然だけは豊富にある。

そこが私にとっての〝約束の場所〟だ。

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そこで野菜作りを始めた。10年を超えた。だが今はちょっと無理。コロナのせいもあって頻繁には千葉に行けない。

月に2回では葉物、キュウリなどは無理。そこで果樹に変更。これはブルーベリー。苗木から育てはじめて

来年夏の収獲を楽しみにしている。

 

 

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