本を捨てる
本が捨てられない。すでに読んだ本はもう一度読むことがある。それが至上の喜びであることもある。まだ読んでない本は、人から譲られたもの、いつの間にか書棚に滑り込んだ本、とにかく捨てられない。
捨てろと強く勧める人がある。『断捨離』の皆さんだ。もっと以前には『「捨てる!」技術』の辰巳渚さんや収納アドバイサーで一家をなしている飯田久恵さんなど。
なぜかいずれも女性。その言や強し。
「再読なんてしない。たいがいの本はまた買えるし、図書館で見つかる」。
それに対して、私見など蟷螂の斧なのだが、必死に「捨てない」を守り続けて、大部分の本は3回の引っ越しに耐えた。
そのなかのひとつ。ロフティングのドリトル先生シリーズ。
動物語が話せて動物にはめっぽうやさしく、女性にはちょっとシニカルな、太っちょで山高帽のお医者さん。
アフリカのサルの伝染病を治すために帆船で出発する冒険物語。私が夢中になった。娘も小学生になると愛読した。そして、どうやら孫に引き継がれそうである。娘が「読み聞かせ」を始めて、私の本棚から引き抜いていった。
捨ててしまっても今でも入手はできる。しかし内容がちょっと違うのだ。70年代、人種差別問題がクローズアップされ、差別表現があるということで、一時図書館から消えてしまった。今あるのは改訂版。となると、作者の人間や動物への平等な愛情を理解したうえで、原本をもう一度読んでみたいではないか。
どこがどう変わったのか。今の娘ならわかる。いずれ孫にも話してやれる。そんなことができるのが、ささやかな私の自慢。
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