トカイナカのすすめ 第6回 あなた一人で、と言われないために
そもそもイナカ暮らしなど一度も考えたことのないカミさんをどのようにしてイナカに連れ出すことができたか。
カミさんは「謀られた」と少し前までよく言っていた。
あたかも私の深謀遠慮の作戦に乗せられた、ということとなっているが、それはあくまで結果的にそうなったまでのこと。
20年前、はじめてカヌーに乗せた。5月の連休の旅行プランが少しもまとまらないうちに直前になった。間際にいいホテルがとれるわけがない。そこで窮余の一策、カヌー教室にもぐりこんだ。行く先は静岡県の、カヌーをやる人には有名な気田川だった。このカヌー体験と河原でのキャンプがめっぽう面白かった。
二人ともトカイ暮らしが長く、清冽な川のながれ、夜空に輝く満天の星は本当に久しぶりの体験だった。ライフジャケットを着ていたにせよカヌーが沈(ちん=転覆)して、急流に放り出されて自力で川岸にたどり着いたハプニング。
それ以後、荒川、裏磐梯の桧原湖、秋元湖、四万十川などにでかけた。すべて河原や湖畔でのキャンプ。リゾートホテル、ゴルフ、温泉、といったしゃれた休暇を志向しなかったのは、やはり最初の野外体験のせいだったかもしれない。
カヌーでのんびり川を下っていくと、ところどころに畑があり、うまそうなトマト、きゅうりが実っている。で、その延長線で野菜づくりに転換。実はカヌーは結構体力がいるのだ。会社の勤務をつづけたままの週末カヌーキャンプは50歳を超えて体力の限界を感じてきた。
そこで畑を借りて野菜づくりに汗を流した。最初は茨城県水戸市内原、次に神奈川県津久井町青野原。どちらもよい農地だったのでびっくりするほどの豊作で、カミさんも夢中になった。毎週末トカイから車で2時間くらいかけて畑へ。そのうち借りている畑では物足りなくなった。自分の畑を持ちたい。汗をかいたら風呂に入って帰りたい。
そんなわけでイナカさがしが始まった。トカイから近い、というのが絶対条件であった。
退職したらどこでも自由に土地を選べるはず、ということは考えなかった。あくまでもトカイを離れずにイナカに畑を持つ。そこにほんの小さな小屋があればいい。借地、借家でいい。
それならばカミさんに依存はない。
というわけで話し合いというよりアウトドアの実体験を積み重ねることで、カミさんは次第に感化されたというところが、実情です。
イナカ暮らしをしたい。思い込むと男は一途になる。トカイで息が詰まるような生活をしてきた30数年の人生から開放されて、自然の中でいい空気の中で暮らしたい、そう思い出すと、ほとんど渇望に似た感情にかられる。私もそうだった。
しかし、人生の後半生、伴侶とともに生きることの方がもっと大切なことであることを忘れてはならない。
私のささやかな体験からすると、突然イナカ暮らしを提案するのではなく、少しずつ実践を積み重ねること、それが大切と思うのです。
くれぐれも、イナカ暮らしの提案が、離婚につながらないように。
写真 金田から袖ヶ浦へ。右折して君津方面へ。ここで必ず立ち寄るガソリンスタンド。東京よりL当たり5円から10円安い。
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